
2013年NHK「あさイチ」で「電車の中のベビーカーは迷惑」vs「子育てに対する理解がなさすぎる」という内容が取り扱われました。
そのとき、私はヨーロッパのある国で、1歳になった娘の子育ての真っ只中でした。
ネットでこの論争を知ったときには軽くショックを受けたのを覚えています。
まわりの日本人ママたちの話題はもちろん、日本のベビーカー事情に集中しました!
なぜ日本では、ベビーカーに厳しいのでしょうか?ヨーロッパではどうなのでしょうか?
ヨーロッパでのベビーカー事情
ヨーロッパの街並みを想像してみてください。
歴史的な建築物、通りに馴染んだレトロな乗り物…。
新しい建物を造るにしても昔の雰囲気を壊さぬよう、いろんな規定があります。
とくに、石畳が意外と厄介なのです。
出典:ぱくたそ
私がヨーロッパに引っ越すことが決まったとき、在留邦人にベビーカーはどうしたらよいか訊ねたところ、「日本のベビーカーだとすぐに壊れると思う」と言われました。
なぜかというと、日本のベビーカーは小型化、軽量化するためにタイヤが小さくなっており、その影響で石畳にはまって故障の原因になるというのです。
私はアドバイスに従って、イタリア製のベビーカーを購入しました。骨組みががっしりしており、タイヤも大きいし幌も大きい。
重さはベビーカーだけで8㎏ほどもあります。
でも、ヨーロッパではもっと大きな10㎏超えのベビーカーがたくさん!
双子用のベビーカーの種類も豊富ですし、新生児用の完全に寝かせたまま使用するタイプもよく見かけました。
ママの楽のためだけじゃない!子ども守るための手段としてのベビーカー
さて、どうしてこんなにも大型ベビーカーが存在するのでしょう?
子連れは荷物が多くて大変だから
ママは子供を連れて、買い物に出かける必要がありますよね。
そんなときにベビーカーはとっても役立つ子育てパートナーなのです。
ヨーロッパのスーパーマーケットではレジ袋が有料なところが多く、だいたいの人はマイバッグを持っていき自分で荷物を詰め込んでいきます。
ベビーカーだとマイバッグを取っ手やフックにかけられるので、楽ちんです。
とっさのときに両手が空けられるのも大きな魅力です。
ベビーカーの方が安全だから
さらにはヨーロッパには子どもの手を引いて歩くよりも、ベビーカーに乗せているほうが安全という考え方がありました。
私がヨーロッパに住み始めたころ、4,5歳の子どもがベビーカーに乗っている光景に驚いたものです。
そんな場合は、新生児用とは構造が明らかに違って、本当に座るところだけ…という感じの簡易バギーが利用されていました。
だいたい3歳くらいから乗り換えることが多いようです。
兄弟がいる場合には、下の子用のベビーカーの後ろにステップをくっつけて上の子が立ち乗りしていることもあります。
ベビーカーに乗っていれば勝手に走っていってしまうこともないし、ママの歩くペースに合わせられて負担が少ない。
このような理由で、ヨーロッパのママはベビーカーを就学前までフル活用していました。
ユニバーサルデザインを採用した公共交通機関がママ達に優しい!
ヨーロッパの子連れママたちは公共交通機関にだって躊躇なく利用します。
私が住んでいた地域にはトラムと呼ばれる路面電車とバスが走っていました。
出典:写真AC
最初はどうやってベビーカーで乗り物に乗るんだろう?と不思議に思っていましたが、乗り物には入り口付近に必ずベビーカー2,3台分のスペースが確保されていました。
もちろん大型の車いすもしっかり固定できる器具が備わっています。
だから、ベビーカーママは赤ちゃんを乗せたまま乗車し、降りるときはそのままバックするだけでOK!
ママたちはベビーカーの近くに立っていて、先に降りる人の邪魔になりそうであれば1度車外に出ることもあります。
また、乗り物は乗客がボタンを押してから運転手に扉を開けてもらうのですが、ボタンには2種類ありました。
1つは普通の丸いもの、もう1つはベビーカーマーク!乗り降りに時間がかかることを運転手に伝える良い方法だなと感心しました。
さらには、最近の乗り物はユニバーサルデザインが増え、昇降口が緩やかなスロープになっているものが増えています。
時刻を調べるサイトでは、その時間に通るバスは新型タイプか旧型なのかも示されており、ベビー連れのママや車いすの人がお出かけをしやすく工夫されているなと感じました。
このように、ヨーロッパでは、ベビーカーでも気兼ねなく乗車できるシステムができあがっていました。
2020年のオリンピックが近づき、交通整備が進められている今、日本でももっとユニバーサルデザインが取り入れられていくと嬉しいですよね。
日本人に失われつつある?お互い様の精神
先ほど少し触れましたが、利用者の少ない路線では旧型車両が使われており、乗車するときにいくつか階段が存在するものもあります。
本数が多いバス停では見送ることもできますが、1時間に2本くらいしかなく、どうしてもそれに乗らなきゃいけない場合もあるものです。
そんなときはどうしていたかというと…。
だいたい周りの人が手助けしてくれるんです。それはもう当たり前に!
「奥さん手伝いましょうか?」さらっと紳士が訊ねてくれ、1人では足りない場合には周りの人に応援を頼んでくれます。
降りるときも同様です。
こんな姿を幼いときから見ていると、手伝うのが当たり前になるんだろうなと思いました。
「私にも孫がいるんだよ。何歳?」なんて気さくに声をかけてくれ、一緒に子どもをあやしてくれるおじいちゃん、おばあちゃんの多さ。ちょっと子どもが泣いたくらいで嫌な顔をする人なんていなかったように思います。
まとめ
結局のところ、日本でのベビーカー論争は、ハード面【電車のスペースと設備を整えること】と、ソフト面【子育て世代への思いやり】の両方からアプローチせねば解決できない問題だと思うのです。
もちろん、ママたちは選択できるのであれば通勤や帰宅のラッシュ時を避けたほうがよいでしょう。
車内でのぐずり対策も大事です。
これは、ママたちが子連れ様と呼ばれないようにする最低限のマナーです。
出典:写真AC
しかし、子どもは親の思い通りになんていかないもの。
そんなときに、手を差し伸べられる余裕が日本人にはあまり感じられないのですよね。席に座れたら、目をつむって周りをシャットアウトしてしまう大人の多いこと…。
優先座席付近で、ベビーカーをたたみ赤ちゃんを抱っこしているママがいるのに、誰も席を譲らないなんてこと、ヨーロッパではまずありえません。
優先座席はよほどの満員でない限り、対象者のために空けておくシートだからです。
日本に帰るたびにこんな風景を見ると、ちょっと寂しい気持ちになります。
子育て世代の人もそうでない人も、周りに目を配りちょっとだけ手を貸すことが当たり前の雰囲気になっていけばいいですよね。
きっと親切の輪はつながっていくはず。まずは自分から行動を起こしてみませんか?
ライター めりーまま
海外と日本を行ったり来たり。5歳と3歳の姉妹を育てています。