【ママ友小説】ママ友カースト~ 私は最低な母親?ストレスの向かう先は我が子だった

【幼稚園のママ友トラブル~ママ友カースト第11話】

梨華は、桜子さんからも、ゆいちゃんからもひどい言葉を浴びせられ、精神的に参ってしまう。そんな事態を友美のせいにする旦那に、友美は心底嫌気が差し、夫婦仲はますます悪くなる。そして、梨華はとうとう幼稚園へ通うことができなくなってしまっていた。



梨華が特別教室に通う事が決まった日の事。

幼稚園を休んで、三日がたっていた。
「梨華?そろそろ幼稚園行ってみる?」
「……ままとおうちにいるの」

梨華は、まだ幼稚園に行く気にはなれないみたい。どうしよう。
旦那からはいつまで休ませる気だって言われた。

こっちの気持ちも知らないで……!
口出ししないでほしい。

その時、
…プルルルル
あ、幼稚園からの電話が来た。

「もしもし、一ノ瀬です。」
「もしもし。担任の小川です。おはようございます。梨華ちゃん、どうでしょうか?心配で。」

先生は梨華の様子をとても気にしてくれていた。
でも梨華の気が乗らないのに、幼稚園へ無理矢理連れて行く事もできない事を相談した。

「梨華ちゃんとお話しさせて頂く事は可能でしょうか?」
「はい。梨華?小川先生だよ!お話しする?」

私は、電話をスピーカーの状態にして梨華へ受話器を渡した。

「りかです。おはようございます。」
「梨華ちゃん!おはようございます!今日もきちんとご挨拶ができて偉いですね!」

梨華は、先生との会話は普段通りにできた。
時々笑ったりもしていた。

「では、後ほどお伺いいたします。」
「はい、すみません。お待ちしております。」

そして授業が終わったあと、小川先生が家まで来てくれた。
先生と話し合った結果、梨華も納得した上で特別教室に通う事になった。

梨華が今まで通り、幼稚園へ通う事ができるように、少しの間特別教室で様子を見よう。
その日は瞳ちゃんも花ちゃんも家に来てくれて、梨華を励ましてくれた。

そして、いつもの登園時間より2時間遅く、幼稚園へ行った。
梨華は、幼稚園に行きたくないとは言わなくなっていた。

でも、「ゆいちゃんのいるところにはいかないで。」と涙目になって訴えてくる。
「大丈夫だよ。今日はママと一緒にお勉強しよう。」

特別教室に入ると、おばあちゃん先生が待っていた。
「梨華ちゃん!おはよう~。よく来たねぇ。」

おばあちゃん先生の笑顔に、私も癒される。
その日は、ずっと3人でお勉強したり絵を書いたりした。

時々、私は先生と梨華の状態について話した。
梨華は、ゆいちゃんや桜子さんの言動にとても傷ついている。
泣いたり寝たりしたら、嫌な事なんてすぐに忘れてしまう4歳なのに、こんなにも引きずってしまっている。

このことから、大勢の輪に入る事が怖くなってしまっているのだろう。
目立ったらまた何か言われる、と小さいながらにわかっているんだと思う。

親が言うのも何だけど、梨華は物分かりが良くて賢い子だから、余計に可哀想だ。
けれど、特別教室での梨華は楽しそうだった。
私と、おばあちゃん先生だけしかいない教室でリラックスできているのだろう。

そして、梨華と私はしばらく特別教室へと通った。
でも、この事態を旦那が許さなかった。

「まだ特別教室とかに通ってるの?」
梨華が寝た後、ソファでくつろいでいる私にいきなり話しかけてきた。

「そうだよ。まだ、クラスには帰ってないの。」

「甘やかしすぎなんじゃないの?高い月謝払ってるのに、他の子たちからだいぶ遅れてるんじゃないの!?お前がしっかりしないから、梨華もあんなに打たれ弱いんだよ。」
旦那は、またイライラした様子で声を荒げる。

「甘やかすって……幼稚園行きたくないって嘔吐までしたんだよ!?それなのに無理矢理連れて行くの?それに、あんなに酷いこと言われたら誰だって傷つくよ!まだ子供なのに……!」
私もさすがに反抗した。

「月謝なんて気にして!梨華の気持ちは考えないの!?」
今にもつかみ合いに発展しそうな位、私達は大声で怒鳴り合う。

なんでこんな人と結婚したんだろう、なんで好きだったんだろう。
怒鳴り合いながらも、こんな事を頭の中で考えていた。
「まま?まま?」
すると、梨華が起きてきてしまった。
泣きながら、私を探しに来た。

「梨華、起きちゃったの?」
「まま、ぱぱとけんかしてるの?」

……ドキッとした。
喧嘩してることが分かったら、梨華の心にさらに負担を与えてしまう。

「喧嘩なんかしてないよ。さ、寝よっか。」
私は、旦那の顔も見ずに梨華を連れて寝室に向かった。
もう、本当に顔も見たくないくらいだ。

朝起きると、私の顔を見るなり旦那が言った。
「そろそろ、ちゃんとクラスに戻して遅れを取り返せよ」

私は、返事をしなかった。
「シカト?はぁ~・・・そんなんで母親かよ。テキトーに育児しやがって。」



何が分かるって言うの。
何で、そんな簡単に言うの。
1番焦っているのは私だし、1番辛いのは梨華なのに。
どうして優しい言葉をかけてくれないの。
どうして追い打ちをかけるような事を言うの。

私は、色んな感情があふれて思わず発狂してしまいそうなくらいだった。
必死で気持ちを落ちつかせ、深呼吸をする。

旦那を送り出したあと、梨華の幼稚園の準備をする。
「梨華ー、そろそろ着替えなさい。」
「・・・はぁい」

梨華は、テレビを見ながら気のない返事をする。
軽く掃除を済ませ、梨華の様子を見るとまだテレビを見ている。
「梨華!着替えなさいって言ったでしょ。早くして。」
「はぁい。」
自分の化粧やら、身支度を終えて梨華の様子を見ると、梨華はまだテレビを見ていた。
なんなら、さっき見た時と体勢は変わっていなかった。

「梨華!着替えなさい!聞こえなかったの!?早くしなさい!!」
私はつい怒鳴ってしまった。

梨華も、ビクッとして慌てて着替え始める。
ところが、上手く着替える事が出来ずにぐずぐずし始めた。
しまいには、「きょうはようちえんいかないー」と泣き出す。

私は、何かがぷちんとキレたように怒鳴った。
何て怒鳴ったのかなんて覚えていない。
ただ、梨華の泣き声が酷くなっていた。
近所に通報されるんじゃないかと思うくらいに泣いていた。
私は、泣いている梨華をそのまま放置してトイレへ逃げ込んだ。

梨華が返事だけして言われたことをやらないなんて、いつもの事。
上手く着替えられずにぐずぐずするのなんて、よくある事。
……でも今は、梨華の何もかもが許せない。
イライラしてしょうがない。
手が出なかっただけ良かったと思うくらい。

一人になりたい。
何もしなくない。
何も考えたくない。

私は、イライラした感情に支配されていた。
このイライラを、どこにぶつけたらいいのか分からなかった。
思わず、トイレの壁を蹴飛ばした。
そのまま、頭を抱えてうつむいていた。

「ままぁ~ままぁ~!ままぁ~!!!うあぁぁー!!!」

少しして、ハッと気付いた。
……梨華!
梨華が泣きわめいて私を探している。
私は、トイレから飛び出して梨華を抱きしめに行った。

「ままぁ~!ごめんなさい~!!」
梨華は、しゃくり上げて泣いている。

私は、心臓がえぐられる思いだった。
「梨華、ごめんね。本当にごめんね。」

私は最低な母親だ。
ストレスが溜まって、ぶつけた先が梨華だなんて。
1番大変な思いをしているのはこの子なのに。

梨華の事を考えるあまりに、それが私のストレスになってしまっていた。
旦那へのストレスあって、この子に当たってしまった。
本当にごめんね……。

気が付いたら、私も梨華と一緒になって大声をあげて泣いた。
しばらく抱き合って泣いた。
私は、この子のために何をしてあげられるの。
何をしたら良いの。
ただただ、梨華に申し訳なく、自分が情けなくて泣くしかなかった。

「今日は、お休みさせて頂きたくて……。」
幼稚園に電話すると、おばあちゃん先生が家まで様子を見に来てくれた。
私はまた泣きながら、先生にさっきの事を話した。
おばあちゃん先生は、静かにほほえみながら言った。

「梨華ちゃんには、ママがいればそれだけでいいの。ママが笑って元気でいれば、梨華ちゃんも笑うし元気になるの。大丈夫よ。ママ、よく頑張ってるわよ。」

私は、涙が止まらなかった。
子供のように、声を出して泣いた。
梨華が心配そうに私の顔をのぞいてくると、余計に涙が止まらなかった。
おばあちゃん先生は、私の背中を優しく撫でてくれていた。

この先どうなるか分からないけど、
梨華のためにも私は笑顔でいなければいけないと思った。

次回は来週公開
ライター O. 2児の母です



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