【ママ友小説】女の友情~気の合うママ友ができたのをきっかけにボスママと距離を置いた友美だが

【幼稚園のママ友トラブル~ママ友カースト第6話】
友美は、仲の良いママ友の桜子さんの本当の性格を知って幻滅していた。桜子さんは同じママ友の佐藤さんについて悪い噂を流した張本人だったからだ。佐藤さんはママ友たちといったん距離を置き、友美もひとまずは安心した。そんな時、友美に新しいママ友ができる。
この出来事が、友美の悲劇が始まりだった。



ボスママと距離を置きたい友美はお遊戯会の役員になったが

「いってらっしゃーい!」
「ままぁ~!いってきまーす!」
今日もいつも通りの朝。

「友美ちゃん!おはよ~」
「桜子さん、おはようございます!」

……こっちもいつも通り。

私は、桜子さんが佐藤さんの噂を流した張本人だと知ってから、もう桜子さんと話す事すら嫌になっていた。

だけれど、いつも通りに接しなければいけない。
私のためでも、梨華のためでもある。

きっと仲良くしてもらっているうちは、その通りにしておいた方が良いんだと思う。
私だって、変な噂を立てられたりしたくはない。

でも、桜子さんと関わるのは精神的に疲れるので、何とか自然に距離を置く方法はないかと思っていた。

そんな時、幼稚園の父母会の会議でお遊戯会の役員になった。
桜子さんは今回は役員にはならなかったので、お茶やランチに行く機会が減る!と思った。
佐藤さんは体調不良という理由で欠席していた。

「友美ちゃん、役員になっちゃったね~。話し振られた時、次の役員しますからって断ればよかったのにー。私、言ってあげたのに!」

「ありがとうございます。でも、いずれやらなければいけないし……。」

私は、桜子さんに笑って答えた。

そして、
「これからしばらく役員会で忙しくなり、あまりお誘いを受けられないかもしれませんが……。」
と断りを入れておいた。

「ううん、都合が合うときは行こうね!頑張って~。」
桜子さんも、笑って言ってくれた。

役員会がきっかけで他のお母さんたちとの関わりが増えたら、私も自然と距離を置けるかな。
私はせめて、二人きりでのお茶やおしゃべりを避けたいだけ。

桜子さんのグループに入っているという事を、幼稚園に入った当初は鼻が高かったけど、今はそんな事どうでも良い。

桜子さんと関わる事が自分の中でつらくなってきてしまったし、佐藤さんにも後ろめたい。
それに、他のお母さん達はそれぞれ仲の良い方同士で関わって楽しそうだし。

ボスママと一緒にいるからって、その優越感を味わっているのは自分だけ。
周りからしたら、きっとどうでもいいんだ。
本当に、気の合う人たち同士でいた方が楽しいよね。

今さらだけど、そんな当たり前の事に気がついた。
桜子さんも、もちろん気が合うと思ったから今まで一緒にいたんだけど……。

とにかく今は、もう桜子さんと関わりたくないのが本音。
ちょうど良い距離を保っていたいのだ。

役員会で気の合うママ友ができた友美はボスママとの関りがなくなっていく

そして、役員会が始まった。

娘の通う幼稚園のお遊戯会は、割と大がかりなイベントだからやる事がたくさん。
今日は、演目が発表された。

「今回の年少さんのお遊戯会は、赤ずきんちゃんです~!お話しは、少し変えてみました。オオカミは、おばあさんを食べたりはしません。赤ずきんちゃんと森を冒険して、最後は皆で仲良くなるお話しです。」

へぇ~!面白そう!子供たち、可愛いだろうなぁ。
いろいろと準備が大変そうだけど、梨華が何の役をするのか楽しみだなぁ。

「楽しみですねっ!」
隣りにいたお母さんが話しかけてくれた。

「そうですね~!早く見たいですね。」
「遠山瞳です。娘は花です!」

私たちは、この会話から一気に仲良くなった。

年も同じ。住んでる所も徒歩3分の距離。
まるで、女子高生に戻ったかのようなテンションと会話のテンポだった。
私たちは、役員会の仕事をそっちのけでおしゃべりに夢中だった。

「私さー、幼稚園であんまり仲良いママ友ができなくて……。なんかみんなお上品だし、年上の人が多いしさ。だから、一ノ瀬さんが役員会にいてよかった!」
「私も、年が近いママ友いなかったからうれしいよー!てか、名前でいいよね?」

私たちは笑い合った。
ママ友というよりも、女友達だ。

「学生の時だったら、絶対グループ一緒だったね!」
「え、なんなら小学校から一緒だよね?」
私たちは、この会話の通りに今まで何年も友達だったかのようにすぐ打ち解けた。

「友ちゃーん!おはよー!」
「おはよー瞳ちゃん!」

「こうやって仲良くなってみると、登園の時とか普通にいるんだね!今まで全然気が付かなかった!」
「本当だー!ウケる!」

「このままうち来ない?」
「行く行く!」

私は、桜子さんを見つけたが他のお母さんと話していたので、声をかけずに幼稚園を後にした。会話に割って入るのも失礼だと思ったから。
というのは、桜子さんを避ける言い訳かもしれないけれど・・・

こうやって、桜子さんとの関わりがどんどん減っていった。

役員会が始まってから、ランチやお茶には行っていない。
3回に1回は、あいさつすらしない。
どれも、私の隣には瞳ちゃんがいるから。

私たちは家が近い事がわかったので、時間を決めて毎朝一緒に登園している。
ついでに、そのまま一緒に帰る。

全く気を使わなくて良いから楽だし、子供たちもとても仲が良くなった。
瞳ちゃんと何でも一緒に行動するようになって、桜子さんが入ってくる隙がなくなった
と思う。

瞳ちゃんと一緒にいるのは桜子さんを避けるためではない。
本当に十年来の友達のように仲良くなったので、自然とずっと一緒にいてしまうのだ。

ただ、桜子さんと関わりたくないのも正直な気持ちだ。
けれど、わざわざ避けようとはしない。会えばきちんとあいさつもするし、会話もする。

瞳ちゃんに、桜子さんの事を悪く言ったりもしない。
私は、もう大人だから。

桜子さんのした事を幼稚だと思ったし、それこそ女子高生がやるような噂話や悪口、人をあからさまに避けるような行為はしたくない。
何より、私はもう人の親になったのだ。
子供に誇れないような事は、できればしたくない。



久しぶりにボスママにランチに誘われたが断ってしまう友美

「友美ちゃん、おはよう」
「あ、桜子さん!おはようございます!」

ちょっとだけ、久しぶりにきちんと立ち止まって会話をした。
私は、この時一人だった。

「友美ちゃん、役員忙しそうだね~。最近あんまり話せないから……。」
「忙しい事もないんですけど、あんまり会わなかったですね~。」

「今日、ランチしない!?ちょっと久しぶりだよね~」
桜子さん楽しそう……。

でも、私は瞳ちゃんとの約束があった。
瞳ちゃんは、今職員室にいる。

花ちゃんの担任の先生に用があるので、先に帰ってとの事だったから、私はまさに今帰ろうとしていた時だったのだ。
でもランチは一緒に食べるので、私は先に準備をしておこうと思っていた。

申し訳ないけど、断るしかないか。
「ごめんなさい。今日予定があって、また今度誘ってもらえますか?」
「あ、そうなんだ。じゃあ、仕方ないね。また今度行こう~。いつなら予定空いてるかしら?」

「えっと……。」
ランチやお茶を断り続けるのも不自然だ。

今まで通りにしなきゃ!そう思って、
「明日とか大丈夫ですか?」と言ったその時だった。

「友ちゃん!まだいたの?もう終わったから、行こ~。あ、おはようございます~。」
瞳ちゃんが戻って来た。当然だが、きちんと桜子さんにあいさつもした。

「おっけー!あ!桜子さん、それで明日どうします?」

桜子さんは、瞳ちゃんにあいさつを返す事もなく
「明日は用があって・・・また今度!じゃあね」
と、素っ気なく帰っていった。

私、何かまずいこと言ったかな……。
でも、先約は瞳ちゃんだったし。別に、桜子さんへの態度も今までと変わらないよね?
普通に接したよね?

少し、心臓がドキドキした。ざわついたとでも言うのか。
人間は、悪いことが起こる予知をできるものなのかな。
だって、まさにこの時から、桜子さんの次なるターゲットは私になったのだから。

新しいママ友はママ友付き合いや噂話に無関心

「あの人、なんとなく怖いオーラ漂ってるよね~。友ちゃん、仲良いの?」
帰り道の途中、瞳ちゃんが聞いてきた。

瞳ちゃんは、ボスママの桜子さんの事をよく知らない。
佐藤さんの噂の事も、ぼんやりとしか知らない。

梨華が、入園式で園児代表になったことも知らない。
ランチを食べながら、いろいろと話した。桜子さんが佐藤さんの噂を流したことも。

全部話して、やっときた反応が
「へえ~!!やばいね。」

何とも言えない、どうでも良さそうな顔をしている。
「……もっと何かないの?」

私は、笑ってしまった。

「てか、梨華ちゃん園児代表だったんだー!花のビデオ撮るのに夢中で、全然聞いてなかったし見てなかったわ~」
「そうかそうか。」

瞳ちゃんは、女特有の噂話に興味が無い。
グループに縛られる事がないからこそ、ママ友もほぼいない。
誰が何で代表になったとか、誰が何で有名とか、どうでも良いのだ。

こんな、サバサバしていて、あっけらかんとした性格の瞳ちゃんに、私はとても救われる。
彼女がいなかったら、私はどうなっていただろう。
人生がめちゃくちゃになっていたかもしれない。

このあと迫り来る桜子さんの脅威は、耐え難いものだった。

次回は来週公開~【第7話・次は私の番~自分の娘がお遊戯会の主役に選ばれなかったボスママがついに本性をあらわす
ライター O. 2児の母です



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