【ママ友小説】次は私の番~自分の娘がお遊戯会の主役に選ばれなかったボスママがついに本性をあらわす

【幼稚園のママ友トラブル~ママ友カースト第7話】
友美は、瞳という新しいママ友ができて毎日が楽しかった。瞳とはまるで昔からの親友のような関係になった。一方で、桜子との関わりは少しずつ減って行った。しかし、桜子との関わりが減ったことは、友美の悲劇の始まりでもあるのだった。



ボスママと疎遠になっていく友美は自分の番が回ってくることを知らない

桜子さんとあいさつすらしなくなって、もう一週間がたつ。
私は、完全に嫌われたのだろうか。

私……何か、したのかなぁ。

送り迎えの時も、桜子さんは必ず誰かと話していて私と目を合わすことはない。
わざわざ駆け寄ってあいさつすることも、なんだか一歩踏み出せずにできない。

桜子さんは、外から見るとやはり近づきがたいオーラがある。
一見、とてもお上品できれいなお母さんだけど、逆に言えばお高く止まっていて関わる相手を選びそうな人。

『私はボスママ』って、背中にステッカーが貼ってあるかのよう。
本当に、あんなに仲が良かったのがうそのようだ。

花ちゃんを、クラスへ送りに行った瞳ちゃんを待っている時だった。

「あ、友美ちゃん!おはよ~。」
昼間さんと有馬さんが通った。

「あ!おはようございます!」
ただあいさつをしただけなのだけど、私はなぜかホッとした。

桜子さんの次のターゲットは私かも、なんて考えが少し頭をよぎっていたから。
この二人は、普通に接してくれている。

やっぱり、桜子さんとは顔を合わせるタイミングがなかっただけだ。
桜子さんは、佐藤さんに対してひどい事をしたのは事実だけど……。
次々と標的を決めていじめのような事をするはずはないだろう。

そこまで幼稚な事、親になってもするはずないよね?

「友ちゃん、帰ろ~。」
「うん。」

考えすぎるのはやめよう。
いつも瞳ちゃんと一緒で、声をかけづらくなっちゃったのかな。

でも、私のモヤモヤする気持ちは消えなかった。

お遊戯会の主役は友美の娘に決まったが

幼稚園の役員会で、お遊戯会について説明があった。
園児たちの役は、立候補制で決めるそう。

その中で、先生たちと園児が話し合ってみて、本当にその役ができるかどうかを決める。

園児が多すぎるので、もちろん『赤ずきんちゃん』に参加できない子もいる。
その子たちは、お遊戯の前後に合唱してくれるみたい。

「役は、明日子供たちと話し合いますので、決まり次第プリントを配布いたします。楽しみにしていてくださいね~。」

「梨華、何やりたいのかなぁ~」
「花はね、多分合唱の方に行きたいって言うと思う!人前で何かやるの、苦手だから。」

「合唱も絶対かわいいよねー!このぽんぽん持って歌うんでしょ?」
「耳もつけるみたいだよ!これ作り終わったら、耳って書いてあった。」

私たちは、お遊戯で使う道具を作りながら盛り上がった。
お遊戯会、楽しみだなぁ。

その日、梨華に聞いてみた。

「梨華?お遊戯会で、梨華はどの役になりたいの?」
「りかねぇ、あかずきんちゃんやりたいのー!」

「うーん、言うと思った。赤ずきんちゃんの本読んだことあるもんね。」
「ゆいちゃんといっしょにあかずきんちゃんやるんだ~。」

「赤ずきんちゃんは一人しかできないよ?」
「でも、おやくそくしたもん!」

ゆいちゃんも赤ずきんちゃんやりたいんだ。
できなかったら、桜子さん何か言うかなぁ。
この際、二人とも主演は落ちてくれれば……。

と、思っていた矢先だった。

「ままぁ~!りか、あかずきんちゃんなのー!」
幼稚園からのプリントを見ると、主演に梨華の名前があった。

「えっ!!梨華、赤ずきんちゃんやるの!?すごいすごい!」

梨華が主演か。幼稚園のお遊戯会とはいえ、この子は本当に目立つ事をするなぁ。
と思いながら、他の園児達の役を見てみると、
ゆいちゃん、『お花』かぁ。

少し嫌な予感がした。

「子供たちの役についてですが、赤ずきんちゃんをやりたいという子が大変多かったので、少しセリフを言わせてみて、選考の結果、一ノ瀬梨華ちゃんに決定いたしました。よろしくお願い致します~!」

役員会では、拍手が起こった。

「みなさん、よろしくお願いいたします。」
私は、感謝もこめて一礼した。

きっと、自分の子供に赤ずきんをやらせたいママもたくさんいただろう。

「梨華ちゃん、やっぱりすごいね~。」
「梨華ちゃんなら、間違えずにできそう!」

みんな、こう言ってくれる。うれしかった。

「花はね、先生にお遊戯に出たらって言われたのに、合唱にしてくれって言ったんだって~!梨華ちゃんも、バッチリビデオ撮っとくからねー!」

「瞳ちゃんありがと~!」

みんな、こころよく応援してくれていると感じた。
私も、家でしっかり練習させなきゃ!



役員会の帰り道、先生に呼び止められた。

「瞳ちゃん、先に帰って。またお迎えの時ね。」
「おっけー」

そして、先生から激励された。

「私たちは、梨華ちゃんに赤ずきんちゃんをやってほしいって思ってたんですよ!そしたら、元気よく立候補してくれたから!梨華ちゃんなら上手にできると思って。」

「ありがとうございます。私も家で頑張ります。」

「よろしくお願いしますね。あ、でも!梨華ちゃんばっかり目立っちゃうと、梨華ちゃんも大変だし、他の保護者様にもあれだから……。みんな、だいたい同じくらいのセリフ量にするつもり!」

先生が、笑って言ってくれた。

とうとう決戦開始!

「では、またお迎えよろしくお願いします~。」

そう言われて、帰る時だった。
「‥‥あ‥‥!」
桜子さんと、ばったり会った。

「桜子さん!こんにちは!なんだかお久しぶりですね。」

私は、桜子さんを見つけて思わずドキッとしてしまった。

「どうも~。梨華ちゃん、赤ずきんちゃんやるんだってね。よかったわね。」
なんだか、明らかに嫌な感じ。

私は、桜子さんから気迫を感じて黙ってしまった。

「ゆい、赤ずきんちゃんやりたいって言ってたのにできなくて。帰ってきてからもずっと落ち込んじゃって。しかも梨華ちゃん、赤ずきんやりたいって大騒ぎしたらしいじゃない?だから、先生は梨華ちゃんに赤ずきんを譲ったって言ってたわよ?」

え?そんな事、聞いてない。
梨華が騒いだから、主演になったの?
でも、先生はそんな雰囲気で言ってなかったけど……。

「梨華ちゃん。今まで代表やったり、作品が展示されたりしてたけど、全部騒ぎ立てて先生にお願いしたんじゃないの?だって、こんなに目立つ事ばかりして、おかしいじゃない?」

桜子さんは半笑いしながら、それでも冷たく私に言い放つ。

「それに、あなた最近よく一緒にいる人。よく二人で、あんなにギャーギャー大声で話していられるわね。女子高生じゃあるまいし、恥ずかしくないの?」

今まで、私にため込んでいた不満を爆発させるかのように、すごいけんまくで言われた。

私は、返す言葉が見つからなかった。
言い返したい事はたくさんある。
だけど、桜子さんの顔を見ることすらできなくて、ずっと顔から少しずれた所を見ていた。

「あなたと並ぶのが恥ずかしいわ。いろんな意味で。……じゃ、お先に。」

そう言って、桜子さんはカツカツとヒールを鳴らして帰っていった。

瞳に相談する友美だが、あらそいごとにはしたくない

私は、しばらくぼうぜんと立っていた。
なんだか、桜子さんが急に怖くなってしまった。

何分くらい突っ立っていたのかは覚えていない。なんとか歩き出して、そのまま瞳ちゃんの家へ向かった。

歩いている途中、ずっと心臓がドキドキしていた。もちろん、悪い意味で。

「友ちゃん、どうしたの?一緒にお昼食べる?」
「……うん。」

「何かあった?目の焦点合ってないよ」
瞳ちゃんは、笑いながら聞く。

私は、今あったことをすべて瞳ちゃんに話した。

「え?その人何言ってんの?かりに、梨華ちゃんが騒ぎ立てたからって主演になれるものじゃないでしょ?私らの声、バカでかいかもしれないけど、自分たちだってデカい声で高笑いしてるじゃん!!」

瞳ちゃん、怒ってる。初めて見た。

「私、工藤さんに言うよ!意味分かんない!!自分の娘が主演になれなかったからってさ!腹いせだよ、こんなの!」

「いい。止めて。何も言わなくて良いから。」
私は、あらそい事が苦手だ。事を大きくしたくない。

「でも……。」
「瞳ちゃん、ありがとう。とりあえず、様子を見て先生にも確認してみる。」

後日、先生に梨華の主演の事、今まで幼稚園で目立った事をさせてもらった事などの理由を聞いてみた。
もちろん、先生たちのご厚意や、梨華の実力があっての事だった。

お遊戯会の事は、むしろ騒いだのはゆいちゃんで梨華の方が赤ずきんを譲ったらしい。
多分、ゆいちゃんが桜子さんにデタラメに言ったんだろう。

「誰かに、何か言われたの?」
先生が、心配してくれた。

「いえ、ちょっと気になっただけです。すみません。」
「そう。何かあったら、言ってくださいね。」

この先生は多分、分かっていた。
誰に言われたのかを。

でも、あの人の事も、これから起こる事も、誰にも止められなかった。

次回は来週公開~【第8話・噂話はエスカレート!噂のでどころを知った友美がとった行動とは
ライター O. 2児の母です



SNSでもご購読できます。