【ママ友小説】初めてのママ友~素敵なママ友とそのグループのママたちと楽しい毎日を送っていた友美だったが

【幼稚園のママ友トラブル~ママ友カースト第4話】
友美は、娘の梨華が無事に幼稚園のお受験をクリアして安堵していた。梨華は、入園式で園児代表をまかされ、立派にやりとげる。これから新しい生活が始まると思っていたところ、さっそくママ友ができるのだが……。
悲劇の始まりはここからだった。




初めてママ友ができた友美は同じグループのママを紹介される

「ままぁ~!いってきまーす!」
「いってらっしゃーい!」

梨華が幼稚園に通い初めて3日がたった。
今のところ、全くぐずりもしないで楽しそうに通っている。
私も、梨華が楽しそうで何よりだ。

今日から、給食も始まる。入園してからずっと午前保育だったから、昼過ぎまで梨華と離れているなんて初めてだ。

今までは、自分の時間がほしいと嘆いていたのに……。
いざ、自分の時間ができると何をしよう?

家事なんて、梨華がいなければ1時間もあれば終わってしまう。
こんな事を考えながら、帰ろうとしていたその時だった。

「一ノ瀬さん!おはようございます!」
「あ!工藤さん!おはようございます!」

「よかったぁ!毎日、会わないな~って思いながら探してたんですよ!もう帰っちゃう?」
「あ、はい。特に用事もないので……。」

「今から、お茶しに行くんだけどよかったら一緒に行かない?」
ふ、と見ると、見たことのない3人のお母さんたちが、工藤さんの後ろに立っていた。

「初めまして。」
皆さん、にこやかにあいさつをしてくれて私はうれしかった。

「皆、梨華ちゃんと同じクラスなのよ。だから、よかったらどう?」
工藤さんが、優しい口調で誘ってくれる。

「はい。ぜひご一緒させてください!」
「よかった!じゃ、行きましょうか。」

私たちは、子連れでは行きにくいカフェへ向かった。

おしゃれで優しいママばかりのママ友グループ

カフェへ向かう途中に、それぞれ自分の事を話しながら歩いた。

工藤さんは、40歳。
とても40歳には見えない程若々しくて、入園式の時も、普段の日の今日も高そうな服を着ている。小物も、ブランド物ばかり。付属の学校に1番上が中学生、下に小学生が2人いる。

そして、佐藤さん35歳。
スラッとした長身で見た目はキツそうだけど、このお母さんたちの中では1番優しいと思う。息子の翔くんは、キッズモデルをしていてとってもイケメン!

有馬さん、30歳。
おっとりしていて、いやされる。娘さんも、とてものんびりした大人しい子。

昼間さん、30歳。
1番明るい性格で、会話を盛り上げてくれる。年長クラスに、お兄ちゃんがいる。

みんな個性はあるけれど、会話は盛り上がるし仲良くやっていけそうだな、と思った。
カフェへ着いてからも、わいわいと会話は盛り上がり、場所を移動してお昼を食べ、結局お迎えの時間になってしまった。

「あ!もうこんな時間~!楽しくてあっという間だった~。」
「一ノ瀬さん、またお茶しに行こうね~。」
「はい!また誘ってください!」

私は1番年下だけど、みんな会話を振ってくれたりして、楽しく過ごせた。
やっとママ友ができたんだ、と実感できた。

今までママ友ができずにいた。地元からは離れているから、そもそも友達がいないし。
だから、今日誘ってもらった事が本当にうれしくて、旦那が帰って来るなり報告した。

「今日、ママ友ができたんだ!梨華を幼稚園に送った後、ランチに誘ってもらったの。ほら、入園式で隣りに座っていたお母さん、分かる?保護者代表の!」

「ああ~。うん、覚えてるよ。なーんか、裏がありそうな人だよね?腹黒そうっていうか~。」
「ちょっと、そんな事ないよ!何言ってるの。」

旦那は、意地悪そうな顔をして笑っていた。
ただの冗談だったと思うが、まさか旦那のこの発言が的中するとは思いもしなかった。



ママ友はボスママ?権力者?自分も偉くなったような気がしてうれしい友美だったが

「一ノ瀬さーん!おはよう~。」
「工藤さん、おはようございます。」

ランチに行った日から、工藤さんとの距離がぐんと近づいた。
私を見れば近づいて来てくれるし、お茶やランチにもよく誘ってくれた。

でも、なんで私と仲良くしてくれるんだろう?と不思議に思うこともあった。
もっと年が近いお母さんと話した方が共通点があるだろうし……。

けど、入園式に隣り同士だった事がきっかけなのかな、と深くは考えなかった。
それに、工藤さんとは波長も合うし、話していて楽しかった。

ただ、私は工藤さんに対していつも気になることがあった。

「工藤さん、おはようございます。」

園長先生や他の先生方が、工藤さんにあいさつに来る。ついでのように、周りのお母さんたちもあいさつをされる。

工藤さんを見つけると、わざわざあいさつに来るのは何でなんだろう?
工藤さんって偉い人なの?すごく疑問だった。

その日のお迎えの時間、昼間さんと時間がかぶったので一緒に帰りながら、その疑問を聞いてみた。

「昼間さん、なんでか知ってますか?」

「工藤さんの旦那さん、この学校に関わっているらしいの。教員ではないんだけどね、経営面でね。寄付とかもしてるから、先生方も頭が上がらないんでしょ。それに、子供たちみんなこの幼稚園出身だし……。最近入った先生なんかよりも、幼稚園や小学校の事、よく知ってるわよ。まぁ、ボスママ的なね!」

昼間さんは、最後は笑いながら教えてくれた。
やっぱり、工藤さんて権力者なんだな……。

私は、ますます自分が仲良くしてもらっているのが不思議になってきた。

「なんで、私をお茶に誘ってくれたんですかね?」
「……何でだろうね?でも、みんなでおしゃべりしてると楽しいし、いーじゃない!」

昼間さんは、明るく答えてくれる。
でも、そうだよね。友達になるのに、年とか理由なんて特に考えないよね!

私は、園のボスママグループに入っている自分、という立場に優越感を覚えた。
他のお母さんたちとは違う。工藤さんに気に入られている私は、他のお母さんたちとは違うんだ。

自分も権力者になった気分だった。
工藤さんが仲良くしてくれているのには、理由があるなんてことも知らずに。

「ねぇ、一ノ瀬さん。友美ちゃんって呼んでいい?私の事も名前で呼んでね。」
「はい!じゃあ、桜子さんって呼びますね!」

私たちは、ほほえみあった。
私は、桜子さんを姉のように慕い始めた。

順調に見えたママ友グループとの付き合いに回ってくる順番とは

「工藤さん、おはようございます。」
園長先生があいさつしにくる。

私は当然ついでにあいさつされているだけなんだけれど、桜子さんの隣りにいるだけで他のお母さんたちに一目置かれている気分だった。

でも、梨華のおかげで本当に一目置かれる時もあった。

梨華はお絵かきをすれば優秀賞を頂き、職員室の前に飾られる。
英会話の参観日では、1番成績が良いと皆の前で褒められる。
茶道の授業では大変素晴らしいと言われ、廊下に梨華の作品が飾られる。

お母様の教育がよろしいんですね、と言われてとてもうれしいが、私は何もしていない。
梨華は本当に優秀で、我が子ながらびっくり。『とんびがたかを産んだ』、と自分でよくつぶやくほどだ。

「梨華ちゃん、すごいですね~!一ノ瀬さん、若いのにちゃんと教育してて偉い!見習わなきゃ~。」

他のお母さんたちが褒めてくれる。私も鼻が高かった。

「梨華、幼稚園でお勉強すごく頑張ってるね!ママうれしいよ!」
「りか、ようちえんだーいすき!せんせいもだいすき!おともだちもだいすき!」
「そっかぁ。楽しそうでよかったよ。」

私も梨華も、幼稚園生活は順風満帆だった。
これから、ずっとこんな楽しい幼稚園生活が続いて、皆で小学校に上がって……という幸せな未来を想像していた。

だって、予想もしなかった。
今、こんなに楽しいのに。何もかも順調なのに。こんな楽しい生活が一気に崩れ落ちていくなんて。
こんな未来、考えるわけないじゃない。

「友美ちゃん、おはよ~。夏休み中、ずっと会えずじまいだったね。ごめんね~。ずっとおばあちゃんちにいたのよ。」

「桜子さん!おはようございます~。全然!楽しかったですか?あ!佐藤さんおはようございます!…あれ?聞こえなかったのかな?行っちゃった。」

佐藤さんは、私たちを見ても視線を逸らしてあいさつすらしてくれなくなった。
私だけならあいさつくらいはしてくれるけど、桜子さんが一緒にいると逃げるようにその場から離れてしまった。

他のお母さんたちとも関わる様子がなかった。

……それからしばらくして、佐藤さんの姿を見かけなくなった。息子の翔くんと一緒に、登園の時間をずらして特別教室に通っているらしい。

そしてこれは、もう少し先の未来の私たちだった。

次回は来週公開~【第5話・憧れた生活~母子ともに幼稚園生活を楽しんでいた友美はボスママの本性に幻滅する
ライター O. 2児の母です


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