【ママ友小説】トラブルになることも!~グループにこだわるママ

私の娘が通う幼稚園にママ同士いくつかのグループができている。グループができるのは何の問題もない。しかし、ある1人のママが『グループ』というものにこだわりすぎて、他のママ達といろんなトラブルを起こすようになる。私には関係ないと思っていたのになぜかいつの間にか巻き込まれてしまっていた……。





私の娘は幼稚園の年少さん。名前は『マイ』。私に似て人懐っこくて明るい元気な女の子。幼稚園に入園してからすぐにたくさんの友達ができ、楽しそうに通っている。

私も全然人見知りしないため、幼稚園ではすぐにママ友ができた。クラスのママはもちろん、年中・年長クラスのママとだって仲良くさせてもらっている。

幼稚園のママの間では、グループができている。年少クラスの中だけでもいくつかあって、
『習い事が同じグループ』
『同じマンションに住んでるグループ』
『未就園児の時に児童館で一緒に遊んでいたグループ』
『登園手段別(自転車か徒歩か)グループ』
等々。色んなグループに分かれている。

しかし、だからといってグループ同士対立があるかというわけでもなく、基本的にはみんな仲がいい。私はグループとかって特に気にしたことがなく、どこかのグループに入っているわけではなかった。
そんなママ友の中に、『グループ』というものにすごくこだわっているママがいた。マイと仲良しのモモちゃんのママ。

モモちゃんママとは、マイが幼稚園に入園する前に通い始めたピアノ教室で仲良くなった。思っていることをハッキリ言う結構気の強い人。そのせいで付き合いを渋るママもいたけど、私はモモちゃんママのサバサバした性格が好きだった。

ある日、マイを幼稚園に送り家に帰ろうと歩いていると、目の前に同じクラスのアキちゃんママが歩いていた。
私は、
「アキちゃんママおはよう」
と声をかけた。すると、
「おはよ……。」
とアキちゃんママが小さな声で言った。

元気がない様子が気になり、
「どうしたの?何かあった?」
と聞いてみた。
「ちょっと……」
と言ってアキちゃんママは立ち止った。

「話聞いてくれる?」
とアキちゃんママが言うので、私は
「いいよ。じゃあうちにおいでよ。」
と誘った。

それからアキちゃんママを連れてうちに帰り、まずはアキちゃんママにコーヒーを出した。コーヒーを一口飲み、フゥ、と一息つくと
「あのね……」
とアキちゃんママが口を開いた。

「あのね、モモちゃんママのことなんだけど。マイちゃんママってモモちゃんママとすごく仲が良かったよね?」
とアキちゃんママが私の顔色を窺うように言った。
「うん。モモちゃんママがどうかしたの?」
と私は聞き返した。


「モモちゃんママと仲がいいマイちゃんママにこんなこと言うのもどうかと思うけど。モモちゃんママって言いたいことハッキリ言うじゃない?普段からあんな感じなのも知ってるから、悪気はまったくないと思うの。でも、ちょっと今日嫌な言い方されちゃって。」
とアキちゃんママがうつむいた。

「何があったの?」
と私はアキちゃんママの顔を覗き込むようにして言った。

「あのね……。今日幼稚園にアキを送っていったら、モモちゃんママがいたから挨拶したの。そしたらね、モモちゃんママが返事してくれなくて。聞こえなかったのかもしれないと思ってもう1回声をかけてみたら、モモちゃんママが

『何?アキちゃんママはここのグループじゃないんだから声かけないでくれる?あなたのせいで話が途切れちゃって迷惑なんだけど。』

ってすごく冷たい目で私のことを睨んで言ったの。私ビックリしちゃってモモちゃんママの顔を呆然と見てたら、

『グループに関係ない人は話聞かないで。立ち聞きなんて恥ずかしくないの?』

って言って私から離れて行っちゃって。あんな言われ方するなんて思わなかったからすごくショックで・・・。」

と、その時のことを思い出したのか、アキちゃんママはちょっと涙目になっていた。

「そっか。そんなことがあったんだ。でもモモちゃんママどうしたんだろうね?いつもそんな感じじゃないのにね。」
と私が言うと、
「そうよね。グループ内で何か大事な話でもしてたから思わずそう言っちゃったのかしら?」
とアキちゃんママがつぶやいた。

「でも、もしそうだったとしてもさすがに言い方がキツイよね。アキちゃんママ大丈夫?」
と私が言うと、コーヒーをまた一口飲み
「大丈夫。マイちゃんママに話聞いてもらったら気持ち落ち着いた。」
と笑顔で言ったのを見て、私も
「よかった。」
と笑顔で答えた。

「じゃあ、またあとでね。」
とアキちゃんママが笑顔で帰って行くのを見送り、ソファーに座ってさっきの話を思い返していた。アキちゃんママは大丈夫って言ってたけど何だか心配になってしまった。

そして、お迎えの時間になって幼稚園に行くと、アキちゃんママがモモちゃんママと仲良く話していた。私はホッとしてその場を離れた。




それからしばらく経ち、土曜日で幼稚園が休みだったから近くの公園にマイと遊びに行った。するとそこに数人のママ達が話をしていた。

「こんにちは」
と私が声をかけると、レンくんママが私に気が付き
「こんにちは。マイちゃんも公園遊び?」
と返事をしてくれた。

「うん。天気もいいしね。みんなで何話してたの?」
とブランコに走っていくマイを見つめながらレンくんママに聞いた。
すると、レンくんママが
「さっきね、モモちゃんママがいたんだけど、ちょっと揉めちゃって。」
と苦笑いしながら言った。

「揉めた?」
と私が聞き返すと、

「ここにいるママの中に、モモちゃんママと一緒のグループの人がいるのね。みんなで話してた時にモモちゃんママが来て

『何でそっちのグループにいるの?』って怒り始めちゃって。

そしたらそのママが『別にどのグループとか関係ないでしょ?』ってモモちゃんママに言ったら、

『何言ってるの?私のグループにいるんだから他のグループになんて、入る必要ないじゃない!』

ってモモちゃんママが怒鳴り出しちゃって。結局話が付かないまま怒って帰っちゃったの。もうほんとすごい剣幕で怒鳴り出すからみんな驚いちゃって。」

とレンくんママが答えた。

「なんか、他のママに聞いたんだけど、モモちゃんママってグループっていうのにすごいこだわってるみたいで、自分のグループのママが他のグループの人と話すのとか一緒に行動するのとかが許せないらしいの。そのことで結構いろんな人と揉めてるみたいよ。」
とちょっと小声でレンくんママが言った。

「モモちゃんママが……。そうなんだ。」
と私は言いながら、ふとアキちゃんママと話した時のことを思い出していた。

それからしばらくそんな感じの話を聞かなくなり、私自身もそれを忘れかけていた頃だった。買い物に出かけていた時、偶然隣のクラスのヒカルちゃんママと会ってちょっとお茶でもしようという話になり、近所の喫茶店で話をしていた。

すると、突然
「何してるの?」
と声が聞こえた。話に夢中になっていた私達はそばに誰かが近づいてきたことさえ気が付かなかった。

私とヒカルちゃんママの前に現れたのはモモちゃんママだった。

「あ、モモちゃんママ!こんにちは。さっきヒカルちゃんママにバッタリ会っちゃって。それでちょっとお茶しようってことになっておしゃべりしてたんだよ。」
と私が言うと。モモちゃんママが怖い顔をして
「ふーん。……で、何でマイちゃんママはヒカルちゃんママと仲良くしてるの?」
と言った。

「え?何でって……。特に理由はないけど。」
と私が呟くと、
「理由ないの?何それ。グループ違うんだからさ。そういうの考えなくてもわかるでしょ?」
とイライラした様子でモモちゃんママが言った。

「グループ違うから仲良くしちゃダメなの?」
と私は思い切ってモモちゃんママに言った。すると、
「当たり前でしょ?そのためのグループなのよ!」
とモモちゃんママが怒鳴った。

「でも……」と私が言いかけると同時に
「もういい!モモちゃんママがそんな人だとは思わなかった。」
と言ってモモちゃんママは帰って行った。

「ヒカルちゃんママ、ごめんね」
と謝ると、
「あービックリした。モモちゃんママの話は聞いたことあったけど、ほんとに言ってるんだね。」
と笑顔で答えた。

「私もちょっとビックリした。」
と私が言うと、
「すごいよね。まさかあんな怒るなんて思わなかった。あ、私は全然大丈夫だよ。私よりマイちゃんママ大丈夫なの?」
とヒカルちゃんママが言った。

「う……うん。多分。」
と苦笑いしながら答えると、
「もー、マイちゃんママ頼りなーい。しっかりしてー。大丈夫大丈夫!」
と笑いながらヒカルちゃんママは私の肩をポンっと叩いた。

ヒカルちゃんママの笑顔につられていつの間にか私も笑っていた。少しだけ不安は残っていたけど、ヒカルちゃんママのおかげで大丈夫だって思えるようになっていた。

それから……モモちゃんママはしばらく私のことを避けていたけど、時間が経つにつれあの時のことがなかったかのようにまた普通に私と話すようになっていた。

もしかしたらモモちゃんママは、自分のグループの人が他のグループの人と仲良くなることで、自分から離れていってしまうのではないかと恐れていたのかもしれない。でもそれがないと分かれば安心して元に戻る……。本当のことはわからないけど、そうだとしたらその気持ちもわかるような気がする。

グループはそういうのじゃないよってこと、いつかモモちゃんママにわかってもらいたいなと思いつつも、それまではちょっとだけ気を付けようと思う私でした。

ライター ユーア
息子2人と娘、3人の子供がいます。


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